2021 年 36 巻 3 号 p. 197-202
33歳,男性。母と母方従伯母,2人の再従姉に悪性黒色腫の家族歴がある。17歳時に腰部の黒色斑を,21歳時に左母指爪甲色素線条を切除され,それぞれ表在拡大型悪性黒色腫(SSM),末端黒子型悪性黒色腫と診断された。32歳時,背部と左下腿の黒色斑を切除され,いずれもSSM in situと診断された。これまで欧米では家族性悪性黒色腫の主要な原因遺伝子としてCDKN2A,CDK4の変異が報告されており,近年もBAP1,POT1,TERTなどの遺伝子変異が報告されている。我々が調べ得た限り本邦で過去に遺伝子解析を行った家系は2家系であるが,未だ遺伝子変異の同定はない。自験例でもwhole exome sequencingを行ったが,明らかな病的変異は認められなかった。今後さらに症例を集積し,本邦での家族性悪性黒色腫における遺伝子変異の有無や傾向を明らかにすることが望まれる。