日本関節病学会誌
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原著
解剖学的参照軸に基づく膝デジタル再構成X線前後像における膝蓋骨位置評価
青山 真吾赤木 將男墳本 一郎井上 紳司山岸 孝太郎森 成志戸川 大輔
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2021 年 40 巻 2 号 p. 74-81

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抄録

目的 : 膝単純X線前後像の正面性評価に, 大腿骨遠位顆部における膝蓋骨の中央性が用いられている。しかし, その根拠は明らかでない。一方で, 膝正面を指示する様々な解剖学的参照軸が人工膝関節全置換術 (TKA) で用いられているが, 膝単純X線像の正面性との関係は不明である。本研究では, 解剖学的参照軸により膝関節を正面化した場合の膝CTデータデジタル再構成による擬似的膝単純X線像 (DRR) 上での膝蓋骨位置を評価した。これにより, 膝単純X線前後像の正面性に根拠を与えることができると考えた。

方法 : 内側膝単顆置換術 (内側UKA) を施行した25膝 (OA Grade: 1〜2) のCTデータを術前計画ソフト (3Dテンプレート, 京セラ) に読み込み, 大腿骨側はWhiteside line, 臨床的上顆軸 (CEA), 外科的上顆軸 (SEA), 後顆軸 (PCA), 脛骨側はAkagi's line, PCL脛骨付着部中央と膝蓋腱付着部内縁1/3または1/2を結ぶラインを用いて膝を正面化した上で膝DRR前後像を得た。そして, 大腿骨遠位顆部中央線に対する膝蓋骨中央点の偏位距離 (patellar center offset: PCO) を計測した。また, 大腿骨遠位顆部の幅でPCOを除したcorrected PCO (cPCO), および, Ademolaらのpatellar centering ratio (PCR) を算出した。

結果 : Whiteside line, CEA, SEA, PCAおよびAkagi lineを参照した場合には, 膝蓋骨は大腿骨遠位顆部中央線に対して外側に偏位し, 膝蓋腱付着部内縁1/3と1/2を参照した場合には内側に偏位した。PCOは, Whiteside line, CEAおよびAkagi lineで小さく, それぞれ−0.5mm±1.5, −1.2mm±2.2および−2.7mm±2.7であった。cPCOは, Whiteside line, CEAおよびAkagi's lineで小さく, それぞれ−0.7%±3.0, −1.6%±4.2, −2.4%±4.6であった。PCRは, Whiteside line, CEA, およびAkagi's lineで小さく, それぞれ−2.1%±3.5, −1.6%±7.9, −4.2%±4.8であった。

考察および結論 : 大腿骨側ではWhiteside lineまたはCEAを参照軸とした場合, 概ね膝蓋骨は大腿骨顆部の中央に位置した。脛骨側ではAkagi's lineがWhiteside lineやCEAと似た傾向を示す参照軸であった。我々が通常正面性が良好であると考える膝単純X線前後像は, これらの解剖学的参照軸に対して並行または垂直に撮影されたものであり, 機能解剖学的な根拠があるものと考えられた。また, 膝X線写真撮影時にはCEAを皮膚上から触知して参照軸とすれば, 正面性の良い膝X線写真が得られるであろう。

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